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持久力の考察

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最大酸素摂取量

最大酸素摂取量とは、体重1キログラムあたり1分間に筋肉で使える酸素の最大量を示し、全身持久力の代表的な指標となります。マラソンのような長時間動き続ける運動を有酸素運動というように、ヒトは酸素を利用して動くためのエネルギー源(ATP)を作っています。このATPは、主に細胞内に存在する細胞内小器官であるミトコンドリア内で、糖と脂肪を利用して作られています。このエネルギー生成経路を有酸素系と言います。つまり、体内でより酸素を利用できるほど、多くのATPを作ることができるため、マラソンなど持久力が必要な競技で活躍することができます。実際に最大酸素摂取量とマラソンの平均速度には関係があることがわかっています。

最大酸素摂取量とマラソンの平均走速度との関係
最大酸素摂取量が高いランナーほどマラソンの平均走速度が速い
elite runner(ER) good runner(GR) slow runner(SR)
Sjödin B., Svedenhag J.(1985)Applied physiology of marathon running.Sports Med 2 (2),83-99.

 

また最大酸素摂取量の値は、呼吸器系や心血管系の機能に依存するため、これまでの研究で、最大酸素摂取量と心血管系疾患によって死亡するリスクが関係することもわかっています。生活習慣病を予防し、健康で豊かな生活を送るには、最大酸素摂取量を検査し、年齢ごとに決められた基準に到達しているかを把握することが重要です。

グラフの縦軸は心血管が原因での死亡率と、横軸は最高酸素摂取量を表しています。死亡率と最高酸素摂取量が関係することがわかります。
American college of sports medicine (2013) 運動処方の指針 運動負荷試験と運動プログラム.日本体力医学会・体力科学編集委員会(監訳) 原書第8版

 


換気性作業閾値

換気性作業閾値とはATP-CP系、解糖系の割合が急増し始めるポイントで、運動中はこの強度を境に体内でさまざまな変化が起こります。たとえば、呼吸が乱れだし、二酸化炭素の排出量が増え、そして筋では乳酸の蓄積量が急増します。また、感覚的には、足が急に重くなり、速度を維持するのが難しくなります。そのため、マラソンのレースペースはこの換気性作業閾値の強度を基準に設定することが多くなります。このポイントとフルマラソンの平均速度には関係があることがわかっています。

マラソン平均速度と乳酸性作業閾値(LT)の関係を表しています(※換気性作業閾値と概念的にはほぼ同様のものになります) 。乳酸性作業閾値が高いほど、マラソンの平均速度が高いことがわかります。

中村 和照,仙石 恭雄,白井 祐介,鍋倉 賢治(2019)
フルマラソンの平均走速度と漸増負荷走時の血糖値の上昇量との関係性.トレーニング科学,31(2),85-92.

 


ランニングエコノミー

ランニングエコノミーは、一定速度で走行した際の酸素摂取量によって評価されます。同一速度であっても酸素摂取量には個人差が見られ、酸素摂取量が少ないほどエネルギーの消費が少なく、効率よく走れていることを示しています。現代のマラソンで活躍が著しいケニアのランナーは、他国のランナーと比較してランニングエコノミーが優れていることがわかっています。

様々な国のランナーのランニング中の速度と酸素摂取量の関係を表しています。
現代のマラソンでの活躍が著しいケニア人ランナーは、他国のランナーより各速度における酸素摂取量が少なく、ランニングエコノミーが優れていることがわかります。

榎本 靖士(2007)ケニア人長距離選手の生理学的・バイオメカニクス的特徴の究明
~日本人長距離選手の強化方策を探る~.第5回スポーツ研究助成事業報告書,財団法人上月スポーツ財団,1-22.

 

持久走パフォーマンスは、最大酸素摂取量、換気性作業閾値、ランニングエコノミーの3つによって、約70%が決定されると言われています。